ルビー

男は狼

女の子みたいだ、と言われた。
それも大好きな人に。
「…そんなこと、ないと思いますけど」
「いやいや。わたしより手先器用じゃん」
服作れるし。
そう言ってにっこりと笑顔を作るナマエさんは本当に可愛い。
「ナマエさんより手先が器用な男はみんな女の子みたいなんですか」
「いやそういうわけでもないよ。手先が器用でも筋肉質な人って、男らしいし」
あいにく僕はそこまで筋肉質ではない。
まさか自分の腕を見て悲しむ日がくるなんて予想だにしてなかった。
「ルビーくんは華奢な体つきしてるね」
「……ナマエさん、僕のこと本当は女の子なんじゃないかと疑ってたりしませんよね」
「実は…ちょっと」
「言っときますけど、手先が器用で筋肉質なやつだけが男じゃないんですよ」
「は?ちょ、ルビーくん!?」
間の抜けた表情を見せるナマエさんを強く抱きしめる。
そして自分にできる最大限のいやらしーい声で耳元に囁くんだ。
「次、女の子みたいなんて言ったら…」
「ひっ…」
「僕は狼になりますから」
「……は、はいぃ………」

男は狼

「ルビーくん、わかったからそろそろ離してくれない…かな?」
「ダメ。僕って案外力あるでしょう?」
「そうだね…やっぱり男の子だね……」


ヒントが足りない

「……ん…?」
「あっ…お、おはよう」
目を覚ますと、ベッドの横になぜかルビーがいた。彼はこれもなぜかはわからないけれど、少しそわそわしている。
「おはよ…どうしてここにいるの」
「いや、あの…ナマエに伝えたいことがあって、ね」
「伝えたいこと?」
ぼーっとルビーを見つめると、彼は少し困ったように目を泳がせながら言った。
「そ、その前に!きちんと身だしなみを整えなよ。女の子なんだから」
「あ」
そうだ、すっかり忘れてた。起きたてで気が回らなかった。思えば今のわたしは、寝癖に寝ぼけ眼でなんともだらし無い。
「僕はしばらくリビングにお邪魔してるから、なるべく速く頼むよ」
「はーい」
姿が見えなくなるまでルビーを見ていた。伝えたいことって、なんだろう。そもそもどうして、彼はあんなに落ち着かない様子だったんだろう。考えても今の頭では到底答えが出て来そうにない。後で本人から聞くことにして、わたしは身支度を始めた。

「お待たせ」
「ナマエってば遅いわよ!ごめんねルビーくん。待ちくたびれちゃったでしょ?」
リビングに顔を出すと、まったりお茶を飲んでいるママとルビーがいた。ママはルビーをすごく気に入っている。
「いえ、お母さん。お気遣いなく」
「ルビー。伝えたいことって、」
「ナマエ!それは外で話そう!」
その瞬間、ルビーはわたしの手を引いて勢いよく駆け出した。家を出て、振り返るとママが呑気に手を振っていた。
「ど、どうしたの」
「あの、さ…僕…」
少し息を切らしながら言葉を紡ぐルビー。彼って、いつもはもっと落ち着いてるような気がする。
「次のコンテスト、マスターランクで優勝したら…その、付き合ってほしいんだ!」
「え、どこに?デパートとか?」
「はっ!?あ…いや、そういう付き合うじゃなくて、僕が言ってるのは…えっと、だ、男女の関係みたいな意味の付き合うで…」
「なにそれ?どこに行くの?」
ルビーはなぜかがっくりとしていた。まったく、今日は謎が多い。彼がどうしてわたしの部屋にいたのかも、どうしてそわそわしていたのかも、そしてどうして、がっくりとうなだれているのかもわからない。
「…も、もういいよ……」
「ご、ごめん…わたし、何か傷つけるようなこと言った?」
「いや、違うんだ…大丈夫、大丈夫……。ナマエ、最後に謝っておきたいことがある」
姿勢を正して、ルビーはわたしに向き直る。そして深く、深く、これでもかってくらい深く、深呼吸をした。わたしまで緊張してしまう。
「君が寝てる時、寝顔があまりにもキュートだったからキスしてしまった!ごめん!」
「えぇええっ!?」
「ちなみに僕の言う男女の関係はそういうことを普通にするような関係って意味だ!一人の女性としてナマエが好きだ!コンテスト絶対に優勝するから!それじゃ!」
見たことがないくらいの猛スピードでルビーは走って行ってしまった。わたしはこれから彼とどんな顔で会えばいいんだろう。彼がコンテストで優勝したらわたしも彼を一人の男として好きになるべきなのか。わからない。でも一つだけ確かなことがある。
「キス、された…?」
それがなぜか嬉しいってこと。そして、なぜかわたしの心臓はバクバクと脈打っていて、顔が熱いということ。本当に、今日は謎が多い。

ヒントが足りない

そもそもスキってどういうこと?

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