ジュン1

痛かった

どんっ
バトルフロンティアで誰かとぶつかった。
わたしはその人物を確認する余裕もなく尻餅をつく。
「いたた…」
「ってー…」
どうやら相手も尻餅をついたらしく、わたしの視界には相手の足。
「すみませ…あ!」
「どこ見て歩いて…あ!」
お互い顔を合わせて驚いた。
だって目の前には。
「ジュン!」
「ナマエ!」
久しぶりに会う幼なじみ。
ずっと会いたかった人。
「久しぶりだな!」
彼は笑ってるけど、わたしの目からは一筋の水滴。
「っておい!なんだってんだよー、そんなに痛かったか!?」
「あ……いたかった…」
「まじで痛かったのかよ!わりぃ!」
「会いたかった!」
「は!?」
勢いよく座ったままの彼に抱きつく。
相変わらずうるさい彼でよかった。
何も変わってない、わたしの知ってる彼で。

痛かった

「どこも痛くねぇのか!?」
「…それはもういいでしょ?」
彼は相変わらず、ムードがない。


走れ

「なんだってんだよー!」
そう叫んで走り去ったジュン。
彼はいつもわたしを置き去りにする。
せっかちで、周りが見えなくなる。
そんなどうしようもない彼と、わたしは昔からずっと一緒にいた。
「ちょっと、待ってよジュン!」

走れ

大好きな彼の背中を追って。


のど飴

「ナマエー…」
「……どうしたの、その声」
聞き慣れないしわがれた声で名前を呼ばれ、振り向けばそこには見慣れた人物。
「俺毎日叫んでるがらよー…のど、いだめだ…なんだっでんだよー」
「…濁音が入ると訛りみたい」
「ぞんなごど言っだっでよー…」
肩が下がっていて元気のない彼を見ていたら、なんだかちょっと可愛く思えた。
「ポケモンセンター、行く?」
「俺はボゲモンじゃねー…」
「いやでもさ、もしかしたらトレーナーも診てくれるかも」
「づーが、病気じゃねーがら」
あ、そうだった。
彼は叫び過ぎてこうなったんだった。
「…あ!のど飴あるよ」
「まじがよ!げほっ、ぐれ……」
思わず叫んで咳込む彼にのど飴を差し出す。
「ざんぎゅー」
彼は迷わずそれを手に取って包みを開き、口に放り込んだ。
しばらくのど飴を舐める彼を観察する。

のど飴

「…なんでぞんなに見でんだよ」
「いやなんとなく、ね。それより…どう?」
「ん…、ちょっど楽になっだ」
「それはよかった」


新しい一面

「なぁ…そろそろ……くれよ」
「…何を?」
「だから…その……へ、んじ…」
こいつはそういう方向に関してはものすごく鈍感だ。
一週間くらい前に俺は勇気を振り絞って気持ちを伝えた。
それなのに、こいつは返事を保留にした。
あれから今に至るまで、こいつは何事もなかったように俺に接してくる。
「…返事?」
「だぁああ!なんだってんだよ、覚えてねぇのかよ!?告白の返事だよ!へ・ん・じ!」
思わず爆発。
まさか本当に忘れられてたら…。
「一週間前の?」
「そうだよ!」
「わたし、言ってなかったっけ」
「聞いてねぇよ!」
「え…、じゃあすっかり恋人気分だったのわたしだけなの!?やだ、恥ずかしい!」
……は?
恋人気分だった?
それってつまり?
「どういうことだよ?」
「もう言わなくてもわかるでしょ!こっち見ないで!」
顔を真っ赤にさせたこいつを見てたら、俺まで熱くなってきた。

新しい一面

どうやらこいつは恋愛に関して少し天然だ。


思春期

今わたしはキッサキシティの神殿にいる。
隣にはスズナさん。
「そういえばナマエちゃん」
「なんですか?」
突然、スズナさんに声をかけられる。
「恋の方は順調?」
「ははははぁ!?なんですかいきなり!」
わたしの大声は神殿内では倍になって響く。
「ちょっと、神聖な建物なんだからもうちょっと静かに」
「す、すみません…。でも、本当にいきなりどうしたんですか?」
「ちょっと気になってね。で、どうなの」
スズナさんは嫌に嬉しそうな笑顔。
「いやどうって…別に普通ですよ」
「どこまでいった?手は繋いだ?キスはした?それともえっ」
「だぁああああああ!!」
言わせまいとまた声を張り上げるわたし。
そんなわたしにスズナさんは人差し指を口の前に持ってきて、静かにするよう促した。
「だ、だだだいたい、両想いなわけじゃないですし…」
「そうかなー。大丈夫、ジュンくんだっけ?彼もナマエちゃんが好きだよ。だから気合いでアタックしちゃえっ」
そう言ってガッツポーズを作るスズナさん。
わたしには敵わない。

思春期

「それにしても、恋ばなは楽しーい」
「あはは…」

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